一応専攻なんで、ちょっと(?)書いてみます。


(なんかドアホなミスしてました、ちょっと訂正)





今年の物理学賞を受賞したのは、

NASAのジョン・マザー博士と、

カリフォルニア大バークリーのジョージ・スムート教授。



受賞理由は、

「宇宙マイクロ波背景放射の黒体放射との一致と非等方性の発見」



物理学者以外が見たら、なんだか訳分からんだけですね(笑)





宇宙からは、色んな光(電磁波)が飛んできてます。



日常生活で分かるのは、

目に見える星の光だとか、太陽から来る紫外線。



人間が見ることの出来る電磁波ってのは、

かなり限られてるわけで、

紫外線のように、見えないものがあらゆる方向から来てます。



そんな中、どの方向にも観測できる電磁波があるんです。



それが、「宇宙背景放射」。

星とかが「前景」で、そのさらに向こうから来てる、って事。





どこから来とんねん?って話になるわけですが、

この世にあるあらゆるものは、

放射熱を発してます。



太陽が一番分かりやすい例で、

ストーブでも、暖っためられた空気じゃなくて、

赤外線を感じるなぁ、って言うのが分かるかも?



そして、氷なんかでも、熱を放射してます。

ただ、体の放射する熱の方が強いから、

氷に近づいても熱を失うだけで、

暖かくなる感じは当然しません(笑)





とにかく、「宇宙背景放射」を分析してみると、

絶対温度2.75度の物体が発する放射熱と、

そうやら周波数の分布が一緒らしい、

ってことが分かったんです。

(受賞理由の1つの、「黒体放射との一致」)




CMB and blackbody radiation


(宇宙背景放射と、黒体放射の比較。重なって、線が1つしか見えません)




絶対温度2.75度、

つまり、絶対零度から2.75℃だけ上の温度です。

普通に摂氏で書くと、マイナス270.4℃(!)。





この温度で、

全ての方向から熱放射がされてるって言うのは、

ビッグバンの証拠の1つとされてます。

(他の説明がしにくい現象、って事)



え?ビッグバンは熱かったんじゃないの?

って突っ込まれそう。



そう、ビッグバンが熱いのは確かなんですが、

それは、宇宙全体のエネルギーが、

小さな空間に閉じ込められていたから。




宇宙がかなり広がって、

全体の温度が3000℃くらいまで下がってから出てきたのが、

この宇宙背景放射なんです。




しかも、その3000℃位の温度から出てきた放射線は、


宇宙がさらに広がるにつれて、


どんどん冷やされ、絶対温度2.75度まで落ちた、と言う事。





もう1つの受賞理由は、

宇宙背景放射の「非等方性」の発見。



簡単に言うと、方向によって、

ほんのちょっとだけ温度が違う、って事。




CMB Anisotropy


(宇宙背景放射のゆらぎの図)




それじゃあ、全部の方向から同じ温度で来てるっての、

嘘じゃん?



いや、この場合の「ちょっとだけ」って言うのは、

10万分の1度レベルの違いなんですね(笑)

だから、この放射線についての理論は、

このゆらぎのために覆されることは無いです。





なんでこの発見が面白いかって言うと、

このほん~のわずかな違いが、

原始宇宙の物質の分布への手がかりになるから。



今の宇宙に、

銀河系など、物質が一杯ある場所があれば、

物質がほとんど無い場所もあるのは、

宇宙背景放射が出た頃の、物質の偏りのためと思われてます。



つまり、物質の多いところには、

重力で周りの物質も引き寄せられてもっと詰まってきて、

元から少ないところは、

どんどん空っぽになっていってしまった、って事。





この宇宙背景放射の研究でノーベル賞が出るのは、

最初にこれを発見したペンジアスとウィルソンが78年に受賞して以来。



でもこれは、今の物理ではホットな話題の1つ。

何人か続けて受賞する可能性もありそうです。



(画像はWikipediaより)